TOP > TOPICS > #15 Save the Elizabeth Street Garden in Soho
COLUMN
ソーホー・ノリータ地区にある、誰かの家の庭のような公園が、今消えゆく危機を迎えている。
この小さな、だが貴重な公園を守ろうと地域住民や存続に賛同する周辺リテイルショップ・ブランドらが都市開発を進める市に対し、人々が日々集い、癒しを与えている今も存続を訴え続けている。
ノリータ地区、エリザベスストリートを、ハウストンストリートから南下すると、右手に現れるのがこのエリザベスストリートガーデンだ。
マンハッタンにはセントラルパークの他、幾つかの公園が点在しているが、その数は少なく、この地域に至ってはここ以外に、これほどに緑のある公園はない。
1800年代、ここには公立の学校が建っていたが、1900年代後半になり、学校は封鎖され、更地となった。
ニューヨーク市の所有するこの土地を、近くでギャラリーを経営していたオーナーが、約40万円の家賃で市から借り、荒れた空き地に植物を植え、自分のギャラリーで扱っている彫刻や石像を飾り、保管・販売していた。
その後2016年に非営利団体として、この場所を誰でも入れる公園として解放し、公園の植物の手入れがボランティアによって行われるようになり、半ばニューヨーク市の公共の公園のような場所となっていった。
ところが、2012年にニューヨーク市と都市開発を進める人々によって、この場所を含む周辺地域を再開発し、高齢者が格安で住めるアパートを建設するという計画が立てられた。
しかし、計画を進めることを公園の存続を願う人達はもちろん快諾せず、市に対し、この公園の存続を現在も尚、訴え続けている。
この、”お年寄りのための格安住居建設”計画、一見するととても前向きな事業のようにも聞こえるが、実際にアパートが完成したとしても、この敷地面積では、居住できる人数はとても限られている事は明々白々な事実である。
この場所に目を付けた建設会社は、市からこの場所を買い取り、この計画を進めようとしている。
忘れてはならないのは、この計画が住居スペースだけではなく、都市開発だという点。
もし本当に”お年寄りのため”と言うならば、市はこの場所以外に保有している、ここよりも広大な面積の空き地や駐車場への建設薦めればいいのではないだろうか。
この公園は様々な人に愛され、活用されている。
ブランド・Lela Roseはここで彼らのブライダルコレクションの発表を行い、イギリスの雑誌Harper’s Bazaarはここで雑誌の表紙の撮影を行い、ステラマッカートニーはこの公園を貸し切ってガーデンパーティーというテーマで2年連続でイベントを行っている。
その他、青空ヨガ講習、誰かのお誕生日パーティーなど、その用途は多様で、それだけの人にこの公園が親しまれているという事がわかる。
現在、ニューヨーク市を相手取り、裁判を起こすための寄付を募っており、昨年の秋には”Fall Fashion Fundraiser”と題し、賛同するファッションブランド、Ulla JohnsonやWendy Nichol、近隣のリテイルショップやレストランなど、30以上もの企業がここでイベントを開催し、寄付金を募りこの公園の存続を訴えた。
今も毎日、お天気の日にはこの公園に人々が集まる。ベビーカーを押すお母さん、新聞を読むおじいさん、犬の散歩をするおばあさん、仕事の息抜きをする人たち、読書をする人。
高齢者のための住居の必要性は絶対である、が、それはこの場所ではなくてはならないのだろうか、とこの風景を見て思わずにはいられない。
“ニューヨークはとても忙しい街。
この場所は誰もが休み、くつろげる美しい場所。
ここは私たちのリビングで、庭で、近所の人達との出会いの場なの”
と、この公園の存続を願う人は語っている。
Elizabeth Street Garden
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