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COLUMN
クリニャンクール蚤の市の昔と今
アンティークのひとつひとつに物語がある
パリ北端、サン=トゥアンに広がるクリニャンクールの蚤の市。その中にあるマルシェのひとつ、「Marché Biron(マルシェ・ビロン)」は1925年に創設され、今年ついに100周年を迎えました。
もとは「Belles Puces」(美しき蚤の市)と呼ばれ、のちに”蚤の市のサントノレ通り”と呼ばれたビロンは、丁寧に修復されたアンティークを扱う市場として洗練された空間を作ってきました。今年は100周年を祝い、6月~9月にかけて市場のメイン通路で歴史展が開催されているので、久々にクリニャンクールをのぞいてきました。
まず話題に上がるのはコーヒーショップ。ネオカフェ文化の浸透です。
単に美味しいコーヒーを飲む場所としてではなく、空間そのものを楽しむ社交場として、SNSを通じて仲間の輪を広げたり音楽イベントを行ったりする場を作り上げ、若い世代の支持を集めています。
マルシェ・ビロン内に設置された展示コーナー
マルシェ内の小道には、歴史家アレクシス・ルコントによるキュレーションにより、当時の貴重な写真、映像、文書、そして現代の姿が比較できるように展示されており、”時間の流れ”を感じながら散策できるようになっています。
全盛期の蚤の市のモノクロ写真
モノクロ写真の中の様子は、当時を知らない世代にとってもノスタルジックで想像力を掻き立ててくれます。
私がパリで暮らし始めた1990年代後半、クリニャンクールはまだ埃っぽく雑然としていて、あまり安全とは言えない場所でした。その頃からマルシェ・ビロンは異彩を放っており、18世紀様式の家具やアール・デコ、絵画彫刻が並び、高級ギャラリーが並ぶカルティエのようでした。
当時私は、日本のファッションバイヤーさんのお手伝いをしており、ショップ用の什器を探したり、リメイク用のアンティークレースやボタン、日本女性も履けるサイズの少年兵用の軍パンなども買い付けていました。値段交渉は当たり前、ゴミの山から宝物を探すような高揚感がありました。
時代の流れとともに、インターネットの普及により世界中どこからでもアンティークが買えるようになり、蚤の市自体も本来の姿から、クリーンな観光客向けのエンターテイメントへと変化しています。そんな中でもマルシェ・ビロンは相変わらず美しく上質な歴史の断片を魅せ続けてくれています。最近ではデザイナーや建築家、アーティストたちがインスピレーションを求めて戻っているようです。
ファストファッションが台頭し、常に新しいものを求め古いものを即廃棄する現代。蚤の市でしか手に入らないような一点物、時を刻んできたアンティークの良さが再び注目されてきたのは理解するのに容易い。
1960年の写真と同じ場所を重ねて
[PROFILE]
KISAYO BOCCARA
パリ在住の帽子職人&通訳コーディネーター。東京藝術大学デザイン科卒業後、渡仏。パリの帽子専門学校を卒業し、C.A.P.職人国家資格を取得。現在は、帽子&アクセサリーのブランドを運営しつつ、日仏をつなぐコーディネーターとして活動。パリ郊外の森近くにて、夫と息子2人の4人暮らし。
From Paris : マルシェ・ビロン100年の歴史
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