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COLUMN
仏最大インテリアショーのファッションエリアで注目される日本ブランド
整然と並ぶ山葡萄の籠「Yama-Biko」
パリ郊外のVillepinteにて開催された「Maison et Objet」では、日本の職人技を活かしたファッションブランドがますますパリに進出していました。
「Maison et Objet」は、インテリア・デザイン・ライフスタイルの国際見本市であり、世界中からデザイナーやバイヤーが集まる大イベント。ここでの成功は、ブランドの国際的な評価を高める重要なステップとなります。
これまで日本のものづくりは、国内市場を中心に展開されてきていましたが、近年では、海外市場、特にフランスのファッション業界での評価が高まってきていると感じています。
日本独自の丁寧な仕事や高品質な素材、デザイン性の魅力に加えエコロジーであること、昨今の円安で海外のバイヤーにとってコスパの良い商品に見えている、ということが大きな理由でしょう。
例えば「Yama-Biko」は、日本の伝統工芸である山葡萄のカゴを現代風にアレンジしたブランド。職人の手仕事による細かい編み込み、使えば使うほど深く味わい深い色に変化してゆく葡萄の樹皮。エコロジーに厳しい欧州人に響くのも理解できます。単なるバッグの領域を出たアートアイテムのようだ、と高評価を受けています。
カラフルな靴下が目をひく「CHIYOJI」
続いて「CHIYOJI」は、日本の製造技術を活かしつつ、デザイン性や機能性を兼ね備えた兵庫県の靴下ブランド。スタンドでは花畑のように色とりどりの靴下が展示され目をひいていました。オーガニック素材を使用したコレクションは、サステナブル重視の昨今のバイヤーの目を惹きつけます。いろいろお話を伺ったオーナーの方の御好意で一足いただいたのですが、その履き心地の良さと糸の色味の美しさ、クッション性の良さに驚きました。フランスの靴下は安かろう悪かろう、もしくはべらぼうに高額か、の二極なのです。次回の帰国時にお土産で大量買してしまいそう。
コンパクトで実用性高くおしゃれな長靴「pokeboo」
広島の長靴ブランド「pokeboo」は、雨の多い日本で培われた作業用の長靴製造の技術をもとに、フランスのアウトドアブランドとのコラボで誕生したブランド。会場でも一際目立つ黄色やオレンジのカラフルでおしゃれな長靴は、軽量で防水性に優れているのはもちろん、ファッションアイテムとしても十分成り立ちます。フランスで買うおしゃれ長靴は、しばらく使うと底部分が裂けて水が漏れたりして、やはり作業用のゴツい長靴しかないのかな、と諦めていたので、これは需要ありだと思いました。
BEAMSが和グッズで初出展
玄人好みのニットウェア「M.&KYOKO」
そのほか、織物技術を活かした極上素材&和の伝統柄デザインのストールを展開する「kijinokanosei」や、シャネル等ハイブランドに糸を提供している仙台の佐藤繊維のオリジナルウェアブランド「M.&KYOKO」などなど、その確かな技を活かした美しい製品が、バイヤーの目を惹きつけます。BEAMSも、伝統小物を現代風にアレンジしたグッズで初出展、東京都も江戸切子や提灯を出していました。
今回の「Maison et Objet」で浮き彫りになったのは、日本の職人技とパリのファッション市場の相性の良さ。フランスでは単なるトレンドを追っかけるのではなく、長く愛用できる本物が求められます。職人に対するリスペクトがとても大きい国。日本のブランドが持つ、伝統と新しいチャレンジの絶妙なバランスが、高く評価されてきているのではないでしょうか。今後の日本のブランドのフランス進出はどんどん加速していきそうです。
[PROFILE]
KISAYO BOCCARA
パリ在住の帽子職人&通訳コーディネーター。東京藝術大学デザイン科卒業後、渡仏。パリの帽子専門学校を卒業し、C.A.P.職人国家資格を取得。現在は、帽子&アクセサリーのブランドを運営しつつ、日仏をつなぐコーディネーターとして活動。パリ郊外の森近くにて、夫と息子2人の4人暮らし。
From PARIS:日本の職人技とパリモード界
Select brand pick up:Brady
Shop cruise:MARcourt JIYUGAOKA
Item feature:mizuiro ind
Monthly photo : April