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COLUMN
伝説の女王の素顔とメディアの虚像
メディアに登場するさまざまなクレオパトラ像
セーヌ川沿いに建つ、美しいアラブ世界研究所で開催中の「クレオパトラ:女王の神話と現実展」は、誰もが知る伝説のファラオ、クレオパトラ7世の生涯と、その後2000年にわたり形成されてきた彼女のメディア像について深く追求したエキスポジションです。
エジプト最後の王朝であるプトレマイオス朝の血筋に生まれたクレオパトラは、私たちの中では「絶世の美女」のイメージが強いと思います。
エジプトの歴史を学べる館内
ところが実際には、その容姿よりも優れた政治の才能、語学力、演出力に富んだファラオでした。ローマの有名権力者であるカエサルとアントニウスふたりに愛され、男性を魅了するイメージがありますが、それを上回る圧倒的なカリスマ性を持った女性だったようです。
父、プトレマイオス12世の死により、若干17歳で王になったクレオパトラは、ぐらぐらに不安定だったエジプトをその外交の才能で見事立て直し、単なる飾りとしての“女性”でなく国のリーダーとしての力量は素晴らしいものでした。
さて、現在、皆が思い浮かべるクレオパトラのビジュアルといえば?
真っ黒で前髪真っ直ぐのおかっぱ頭、目を囲む極太アイライン、ゴールドの華美な装飾品……はたしてこれらは本当に彼女自身の姿だったのでしょうか。
実際には、明確な彼女の容姿についての資料は残っていません。彼女の横顔が彫られた当時のコインには、女性らしいセクシュアルなクレオパトラというより、力強く権威の象徴といった表情が見られます。
女性らしさを追求したファッションというよりは、権力を誇示し民衆に神の化身だと思わせる演出だったと言えます。
では、なぜ私たちはあの、美女クレオパトラのイメージを持っているかといえば、それは、19〜20世紀にかけての美術や映画、広告によって故意に作られたものだからです。
映画でモニカ・ベルッチが身につけたドレス
エリザベス・テイラー演じるクレオパトラ(1963年映画)の黄金に輝く衣装と濃いアイラインにブルーのアイシャドウ、そして漆黒のおかっぱ頭。
彼女は、私たちの脳裏に強烈なセクシーファッションアイコンを焼き付けました。
その後のモニカ・ベルッチ(2002年映画)もまた然り。
広告業界では、なりたい女性像としてのクレオパトラが、香水、化粧品、ジュエリー、日常品のいたるところに登場し、利用されてきました。
人々の理想や欲望、偏見により作り上げられてきた姿が私たちの思うクレオパトラなのです。
絵画の中のクレオパトラは黒髪ではない
実際に存在した女王ではありますが、亡くなった後も幾重にもメディアの仮面をかぶせられてきた彼女。
果たして本当の彼女は、どんな姿だったのか。
ジョン・ガリアーノによるディオールのドレス
情報化社会に翻弄されて生きる私たち。「どこまでが真実で、どこからが演出なのか見極める目を持ちなさい」女王クレオパトラにそう問われているようなエキスポジションでした。
[PROFILE]
KISAYO BOCCARA
パリ在住の帽子職人&通訳コーディネーター。東京藝術大学デザイン科卒業後、渡仏。パリの帽子専門学校を卒業し、C.A.P.職人国家資格を取得。現在は、帽子&アクセサリーのブランドを運営しつつ、日仏をつなぐコーディネーターとして活動。パリ郊外の森近くにて、夫と息子2人の4人暮らし。
From PARIS:パリアラブ研究所のクレオパトラ展
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