TOP > TOPICS > From PARIS:パリの真ん中でパン祭り
COLUMN
フランス人の誇り、伝統のパン作り
ノートルダム寺院を見上げる会場
寒く雨続きだったパリですが、すっかり晴天続き。連日30度を超える暑さですが、太陽の日差しを浴びるのが大好きなパリジャンで市内は賑やかです。
今回は、恒例の人気イベント「FETE DU PAIN」パン祭りを取材してきました。会場はパリの真ん中、オリンピックに向けて急ピッチで改修中のノートルダム寺院の真下の広場に建てられた仮設テント。
職人の作業を見入るツーリストたち
私が到着した時にはすでに長蛇の列、ツーリストも大勢いるようで、イタリア語、英語、ドイツ語、いろいろな言葉が飛び交っています。
テント内に入ると、ブーランジュリーの製造工場そのまま再現されており、20〜30人の職人たちがまさにライブで、バゲットやクロワッサン、ヴィエノワズリ(甘い系パン)などを作っています。
目の前にどんと置かれたバターの塊10kgをみるみる生地の中に織り込んでいく作業は、見ていてとても気持ちが良いものの、同時に、あの香り高い焼きたてクロワッサンにはこんな大量のバターが使われているのかと思うと空恐ろしい気分にもなります。
午後になると、エプロンをつけた可愛らしい子供たちがワークショップに参加。一つ一つ自分の手で捏ねたパンを大きなオーブンに入れて焼けるのを待っています。
フランスの三大発酵食品は、チーズ、ワイン、パン。この3つは、フランスの食卓には欠かせないものであり、そのひとつのパン(バゲット)にいたっては、なんと1日に3200万本も消費されているとか。
そんな国民食No.1のバゲットですが、細かい規定があります。長さは50〜55cm、重さは250〜270g、小麦粉1kgに対して水650g、食塩18g、イースト菌12g、この規定に合ったものだけが、バゲットと呼ばれます。
同じ材料でも形が違えば呼び名も違う。バゲットより少し太めのパリジャン、太短いのはバタール。シュッと細いのはフルート、ころんと丸いブール。
好みによりますが、やはりバゲットが王道で、年に一度行われる「パリ・バゲットコンクール」で優勝すれば、エリゼ宮(大統領公邸)に一年間、毎朝バゲットを納める名誉とともに、受賞以前よりも30%売り上げがアップするのだとか。
M.O.F.のトリコロール襟の職人たち
同じ素材でも、発酵時間や温度を季節ごとに調整するテクニックは、職人の腕の見せどころ。 早ければ中学を卒業してすぐに働き始めるパン職人、夜中に起きて毎日パンを作り続ける過酷な仕事ですが、その技術をさらに極めた職人だけが与えられるのが、M.O.F.(Meilleur Ouvrier de France)国家最優秀職人の称号です。ショコラティエや、パティシエ、チーズ職人等にも与えられますが、フランスでは、M.O.F.だけに、襟がトリコロールカラーになっているコックコートを着用することが許されます。
販売コーナーは大忙し
会場のキッチンでは、そんなトリコロール襟のパン職人さんたちが、貫禄たっぷりに慣れた手つきで、クロワッサン生地を丸めています。小麦粉とバターの焼けた甘い香りが広場中に漂っています。その最優秀職人が作るパンやクロワッサンが食べられると、販売コーナーには国籍問わず食いしん坊たちの長〜い行列ができているのです。
青空の下、長蛇の列の人気イベント
[PROFILE]
KISAYO BOCCARA
パリ在住の帽子職人&通訳コーディネーター。東京藝術大学デザイン科卒業後、渡仏。パリの帽子専門学校を卒業し、C.A.P.職人国家資格を取得。現在は、帽子&アクセサリーのブランドを運営しつつ、日仏をつなぐコーディネーターとして活動。パリ郊外の森近くにて、夫と息子2人の4人暮らし。
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