TOP > TOPICS > From PARIS:和食を自炊し始めたフランス人たち
COLUMN
第二次和食ブームの行き着く先は
いつも賑わうルーブル地区の「IRASSHAI」
日本食といえばSUSHI&YAKITORI、は遠い遠い昔。
高級食でない、いわゆる日本の庶民食のB級グルメが大ブームとなり、パリの街中にラーメン屋、おにぎり屋があふれ、たこ焼き、餃子、カレーライス、メロンパン。最近ではオムライスの専門店も登場しました。
ブームが受け入れられ始めしばらくして、家で和食調理にチャレンジする人が増え、日本の食材を扱うショップが次々にオープン。
胡麻油や米酢も量り売りで買える
店内のKISSATENというカフェスペース
去年話題になったルーブル近くの「IRASSHAI」をはじめ、50周年を迎える老舗の「京子食品」がマレ地区に2号店を出したり、韓国&日本食材の「ACE MART」も2号店オープン。その他にも、まるでコンビニのような作りのアジアショップがパリ中心地区にどんどんできています。
「ACE MART」では和食器コーナーも
日本人にしてみれば、1000円越えのゴールデンカレーやキューピーマヨネーズ、500円のラムネ、800円の蒟蒻ゼリーなどは買うのに躊躇するお値段。ですがフランス人からしてみれば、これまでにあったようなお高いイメージとは違い、比較的安価の食材や和食器が手に入るので、どのお店も盛況のようです。
老舗の「京子食品」ではアジア野菜が充実
「FNAC」のような大型書店では、和食 HowToo書籍がずらっと並んでいます。
パリの外食は値段が上がる一方で、スーパーで買うおにぎり1個4.5€(700円)、ラーメン1杯16€(2500円)ですから、好きな日本食を家で作りたいと思う人が多いのも頷けます。
和食のワークショップも大人気らしく、フランス人の味覚をよくわかっている日本人料理人たちがキッチンで教えたり、出張で教えたり。遠地の人にはキットを送り、ZOOMでの授業もあります。誕生日プレゼントにチケットを贈る人も多く、一緒に作ってそれを美味しく食べられるので、贈る人も贈られる人にも嬉しいアイデアです。
リクエストが一番多いのは寿司、そしてラーメン。
ラーメンなどは、長時間煮込んでスープを取ったり、麺を打ったり、チャーシュー仕込んだり。いちいち手間がかかりそうですが、そんな中でヒットしているのが「GAIJIN-RAMEN」。店舗を持たず、UberEatsやDelivelooなどのアプリで注文すると、自宅にラーメン製作キットを届けてくれます。真空パックに入ったスープ(醤油や塩白湯、ベジなど選べる)、生麺、味玉、チャーシュー、メンマなどが入っており、説明書にある通りに茹でて温めれば、簡単に家でラーメンが完成、というわけです。
コロナ禍のロックダウンで外食できない人たちにヒットしたのがきっかけで、今ではパリ以外にも拠点を広げています。
昨今の流行りにはSNSが不可欠ですが、このブームには人気ユーチューバーたちの影響がかなり大。1700万フォロワー越えトップユーチューバーたちは日本ファンで、来日して日本のグルメを楽しむ様子を若者たちが目にする機会も昔に比べて激増し、Netflixでは日本のキャラクターたちが、ラーメン屋の行列に並んだり、お母さんのカレーを食べたりしています。
私のような在仏日本人にとって、手軽に食材を買えるようになり嬉しい限りですが、ここまで手軽にレシピも手に入る環境になってしまうと、これまでのようにフランス人に唐揚げや親子丼など簡単な料理をもったいぶって食べさせることができなくなることが、唯一の残念な点でしょうか。
[PROFILE]
KISAYO BOCCARA
パリ在住の帽子職人&通訳コーディネーター。東京藝術大学デザイン科卒業後、渡仏。パリの帽子専門学校を卒業し、C.A.P.職人国家資格を取得。現在は、帽子&アクセサリーのブランドを運営しつつ、日仏をつなぐコーディネーターとして活動。パリ郊外の森近くにて、夫と息子2人の4人暮らし。
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