TOP > TOPICS > From PARIS:パリ大型美術館が長期休館へ
COLUMN
近代アート大公開中のポンピドゥーセンター
各国の漫画が勢揃いのBD展
マレ地区を歩いていると突如現れる、鉄骨や配管やエスカレーターが外にむき出しの、斬新な原色の建物がポンピドゥーセンターです。
国立近代美術館、図書館、音響音楽研究所、劇場、映画館などを備えたこの総合施設は、1977年当時大統領だったジョルジュ・ポンピドゥーによって創立されました。その個性的すぎる見た目で、当時は下品すぎると大不評だったようですが、エッフェル塔やルーブルのガラスピラミッドのように、今では市民権を得て街に溶け込んでいます。
設立から50年近く経ち、建物の老朽化に伴う安全性、機能性、来場者とのコミュニケーションをさらに強化するために来年2025年の冬に、なんと5年にもおよぶ改装工事に踏み切ります。
そのニュースが流れてから、連日センターの前には長蛇の列。
所蔵するコンテンポラリー&モダンアート6万点の中から、いくつもの素晴らしい企画展が行われているからです。
Lorenzo Mattottiの世界観と色に惹きつけられる
現在は、常設展のほか、シュールレアリズム展、バン・デシネ展が開催されています。バン・デシネとは、フランスとベルギーのフランス語圏での漫画で、アメリカンコミックス、日本の漫画とともに世界3大コミックと言われており、通常BD(ベデ)と呼ばれています。
日本ではタンタンや、アステリックスなどが有名ですが、他国の漫画に比べ、社会批判や哲学的なものが多いのが特徴。AKIRAなど、80年代の日本の漫画にも大きな影響を与えたと言われています。
今回はBDだけでなく、日本のアニメやアメコミの作品も多く展示され、時代背景とともに、戦争やホラー、エロティシズムなどカテゴリーに分けられていて、かなりボリューミーで興味深い企画展になっていました。
月刊漫画ガロをここで見られる驚き
Stephane Blanquetや、Ludovic Debeurneなど、その独特な世界観で有名な漫画たちに並び、日本人がよく知る藤子不二雄や赤塚不二夫、梅図かずおの原画、月刊誌ガロのコレクションまでそろえられ、かなりオタク度高いアングラ寄りのフランス人キューレターなのでしょう。
シュールといえばダリ、オマール電話
一方、シュールレアリズム展の方では、有名どころのシュールレアリズムの絵画や彫刻がここぞとばかり。ダリ、ピカソ、ミロ、マグリット、キリコ、マックス・エルンスト、ジャコメッティ……、誰もが知る教科書にも載るような有名作家の作品がこれでもかこれでもか、と続きます。
これらの一点だけでも日本に来たら、それだけで全国から客が呼べるレベル。まさに所蔵品大放出の企画展で、一生分のシュールレアリズム作品を見てお腹いっぱいになりました。
さて、気になるのは生まれ変わるポンピドゥーを手がけるのは誰か。
コンペでその座を勝ち取ったのは、MOREAU KUSUNOKI建築事務所。その名の通り、フランス人&日本人のコンビです。最近ではサマリテーヌ百貨店を手がけた日本のSANAA、ピノーコレクションの安藤忠雄、有名三つ星レストランも次々に日本人が設計しています。
今後パリに何十年(何百年?)存在するであろう有名建造物に日本人が関わっていることは誇らしいことです。
最上階から見るパリの街並みは絵画のよう
ちなみにポンピドゥーセンターの最上階テラスから見下ろす街は絶景、ここから見える夕陽は私が最も好きなパリの景色です。美術館に入らなくても、誰でも上がってみることができる穴場。
来年から5年間この景色がお預けになるのは残念ですが、新生ポンピドゥーの姿、そしてどんな魅力的な企画展を出してくれるかを楽しみに、のんびり待とうと思います。
[PROFILE]
KISAYO BOCCARA
パリ在住の帽子職人&通訳コーディネーター。東京藝術大学デザイン科卒業後、渡仏。パリの帽子専門学校を卒業し、C.A.P.職人国家資格を取得。現在は、帽子&アクセサリーのブランドを運営しつつ、日仏をつなぐコーディネーターとして活動。パリ郊外の森近くにて、夫と息子2人の4人暮らし。
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