モイ！

フィンランドは「何千もの湖の国」と呼ばれていて、冬になるとそのほとんどが凍ります。湖の上を散策したり、クロスカントリースキーやスケートなどアウトドアスポーツを楽しんだりするのが、フィンランドの冬は欠かせない。

気温が氷点下に下がる日が多いからこそ、サウナで温まるのがとても気持ち良い季節でもあります。聞いたことある方もいらっしゃるかもしれませんが、フィンランドの冬のサウナは少し変わった習慣があります。

それが、Avanto「アヴァント」と言います。

冬のフィンランドは真っ白な化粧に覆われ、湖もきれいに凍ります。

冬の極端クールダウン

以前の冬の楽しみ方のフィンランドコラムで少し触れましたが、アヴァントを簡単に説明すると、フィンランドでは凍った湖に穴を開けて、サウナで体を温めたあと零度に近い水に浸かって一息する、この穴のことをアヴァントと呼んでいます。つまり、季節を問わずフィンランド人は湖に飛び込みます！（まあ、みんなとは限りませんが）

冬のフィンランド帰省の大きな楽しみ: アヴァントで雪の世界で一体化

夏みたいに長く泳いだり遊んだりはもちろん冬はできないのですが、例えば10～30秒ぐらい冷たい水でゆっくり呼吸したり、少し短い距離泳いでみたりするのは私の個人的なおすすめです。もちろん、体を1秒だけ“ディップ”してすぐ上がるという楽しみ方があって、好みはサウナと同様にみんなそれぞれです。アヴァントでクールダウンしてまたサウナに戻って、また熱くなったらアヴァントに入って、一瞬で時間が過ぎて、悩みやストレスも気付いたら解消されます。当然ですが、一回で長くアヴァントにいると体が冷えて特に足指はすぐ寒くなりますが、上がった後の気持ちが最高に良いのです。

何が気持ち良いかというと、アヴァントから湖畔か桟橋に上がったら、気温がかなり下がっていても体が全く寒く感じないのです。体の中から不思議で気持ちの良いポカポカ感が流れてきて、寒い外なのに水着のまま平気でいられて、本当に魅力的な感覚です。もちろん長くそのままいるとまた体が冷えますが、そのときはまたサウナへ戻ります！　サウナの後はリラックスして食欲や睡眠の質もいいと言われますが、アヴァントを追加しますとさらにこの気持ちの良さがレベルアップします。

私は始めて入ったのは5年ほど前ですが、いまだに入るたびに少し怖く感じます。でも、アヴァントの後の気分を考えると、やはりまたすぐに入りたくなります。そうです、私も子どもの頃から入っているわけではないです。実は、フィンランド人みんなアヴァントが好きだというわけではもちろんありません。感覚ですが、半分ぐらいは体験したこともないぐらいですが、好きな人は冬になると毎週のように楽しんでいます。一番アヴァントファンの人は、実はサウナがなくても、アヴァントだけを楽しむというのも、実はそれほど珍しくありません。

ちなみに、フィンランドでは基本的に免疫力や健康に良いと言われていますが、心臓など健康に異常のある方はお医者さんに相談してから入った方が良いと言われています。

公衆サウナでアヴァント体験を

フィンランドは公衆サウナがいたるところあって、地元愛にあふれるローカルなところから、最近のレストラン付きおしゃれなサウナ・スパ施設まで、個性のあるサウナをめぐるのが楽しいです。冬になると、多くのサウナでアヴァントも体験できるので、冬旅の際にはぜひ探してみてほしいです！　といっても、探さなくてもそのへんにあります。

ヘルシンキ郊外にある、一年を通して多くの方に愛されているサウナ「Kuusijärven sauna」

私が特に好きなアヴァントが楽しめるサウナの一つですが、首都のヘルシンキ郊外にある「Kuusijärven sauna （クーシヤルヴィサウナ）」です。きれいな自然な森の中に位置していて、アウトドアもサウナも両方堪能できます。おすすめの楽しみ方というと、最初に少し森を散策して汗を軽くかいて、そのあとゆっくりサウナ&アヴァントでリラックス。フィンランドのパンやスイーツが食べられる、昼間はランチもやっているカフェレストランも併設しているので、サウナの後のエネルギー補給におすすめ。

「クーシヤルヴィサウナ」のアヴァントはでかいので実際にスイミングも楽しめます！

ちなみに、このサウナは実はフィンランドの昔ながらのサウナ「スモークサウナ」なので、じっくり体の芯まで温まり、やわらかーいロウリュが楽しめる少し珍しいサウナです。フィンランド人にとっても貴重でそれほど頻繁に入らないサウナの種類なのでご機会があればぜひ。

自分だけのアヴァントも！

フィンランドの冬は氷点下の日が多くて特に夜は冷えるので、アヴァントの穴も実は割とすぐ凍ってしまいます。管理がかなり大変だからこそ公衆サウナで気楽に楽しめるのがとてもありがたいですが、自分だけのアヴァントを作る人も少なくはないです。

フィンランドでは湖畔にコテージを持っている人が多いので、アヴァントを自分で作ってしまう人がたくさんいるのです！　最近家族みんなでアヴァントにかなりハマっているので、冬休み帰省するときにアヴァントを作って一緒に楽しんでいます。周りに誰一人いない、静かな世界で自分だけのサウナとアヴァントが楽しめるのが本当に至福のひと時。

コテージのプライベートアヴァントは東京のにぎやかな生活を楽しんでいる私にとって、コントラストがとても激しいからこそとても落ち着くことができ、豪華なひと時。

季節を問わず自然をエンジョイ

フィンランドは自然が生活の一部で、冬も大自然を五感で思い切って楽しみます。個人的に一番好きな楽しみ方は、クロスカントリースキーまたは雪の降った森でランして運動を頑張って、そのあとサウナとアヴァントでリラックスして、美味しいご飯とアイスクリームを食べること。夜は爆睡に決まっています。

もうしつこいと思われるかもしれませんが、機会があればぜひ体験してみてください。

[PROFILE]
Noora Sirola（ノーラ・シロラ）

フィンランド・タンペレ市出身。 タンペレ大学大学院卒業後、2019年から駐日フィンランド大使館商務部兼フィンランド政府観光局での勤務を経て、その後北欧専門旅行会社に務める。2024年3月よりフィンランドを代表するテクノロジー会社に勤務。フィンランドの観光促進、京丹後市の温浴施設「ぬかとゆげ」のサウナプロデューサーや日本モルック協会公認「モルックアンバサダー」など、様々な分野で日本とフィンランドを繋ぐコネクターとして活動中。