TOP > TOPICS > From FINLAND : フィンランドの夏の遊び Mölkky(モルック)
COLUMN
モイ!
フィンランドと言えば森と湖、ムーミン、マリメッコ、オーロラ、アアルトのデザイン、サウナなど。そしてこの数年もう一つ、日本でもよく出会えるようになったフィンランドならではのものがあります。
最近代々木公園など、日本の公園に行くとたま~に数字の書いてある木製の棒を投げて遊んでいる人々を見かけます。これは、実はフィンランドのもの。Mölkky(モルック)というフィンランドの遊び、ゲーム、スポーツです。
白樺で作られているモルックセット。シンプルなデザインがフィンランドの自然、フィンランドらしさをよく表しています。
Mölkky(モルック)とは?
モルックは1990年代にフィンランドの湖水地方で生まれたアウトドアで楽しむスポーツです。フランスやポーランドをはじめ最初はヨーロッパで普及し、最近では日本でも急速に人気が高まっています。全国で大会が開催されたり、大学でモルック部が生まれたり、メディアでもよく取り上げられるようになり、私もふくめてフィンランド人は日本のモルック熱に大変驚いています。
モルックの遊び方はとても簡単で、モルックセットとなんとなく平らな場所さえあれば、どこでもだれもいつでもできるのが特徴です。モルックを簡単に説明しますと、フィンランドの白樺で作られた「モルック棒」をだいたい3~4メートルの距離から投げて、1番から12番まで書いてある「スキットル」を倒して点数を取ります。感覚的にボウリングやダーツに少し似ていると言ってもいいでしょう。
点数の取り方はとても簡単で覚えやすいです:
①一本のみを倒すと、スキットルに書いてある番号が得点になります
②二本以上を倒すと、倒した本数が得点になります
③50点ぴったりを最初にとった方が勝つ。ただし、一点でも50点を超えてしまうと、自分の点数が半分の25点に戻ってしまい、そこからやりなおしてまた50点を目指します。
モルックのスタート時点はスキットルがきれいにまとまっていますが、勝負が進むとどんどんスキットルが広まって遠くなり、倒しにくくなります。
シンプルと言いながらも意外と奥深いモルック
モルックで遊ぶのに力もスキルも不要で、子供からお年寄りまで、性別年齢肩書など関係なくだれでも気軽に遊べます。新しい方との交流のきっかけにもなり、フラットに誰でも始められるのがモルックの魅力の一つなので、会社のチームビルディングなどにも使われています。
シンプルでどなたでも気軽に始められますが、やってみると意外と奥深く、色んな戦略が立てられ、練習すれば練習するほど以外とハマります。一人対一人でも遊べますが、3~4人のチームで遊ぶことが多くて、チームワークやコミュニケーションも欠かせません。本気でモルックをやろうとするとスキルはもちろんとても大切ですが、スキットルがどこに飛んでいくなど、運や偶然も関わってくるので、2回同じ勝負ができないからこそ面白い遊びです。
どんどん広まっていくスキットル。倒したスキットルは倒れた位置に立たせ直すため、自分の次の投げる番のときにどの数字がどこに立っているか予想するのがかなりのチャレンジ。
モルックはコテージで遊ぶときが多い
この数年日本では大きなモルック大会が開催されるようになり、強いチームがどんどん増え、スポーツとして広まっていますが、フィンランド人にとって、モルックの感覚は実はだいぶ違います。
フィンランド人は、4週間ほどの長い夏休みをとることで世界的に知られていています。多くの人は森の中、湖畔にあるサマーコテージへ移動し、森でのんびりしたり、サウナに入って湖に飛び込んだりするなど、自然の中でシンプルなライフスタイルで一年の疲れを癒します。そんなコテージライフでよくモルックも登場します。
ほとんどのサマーコテージのどこか倉庫の奥の方で、モルックセットが見つかるはずです。フィンランド人がよくモルックをやる風景、シーンを考えると、夏の長い一日をゆっくり自然の中で過ごし、夕方にサウナを温めて、何をしようかな~って思ったらモルックを思い出します。片手にビール、片手にモルック、友だちとおしゃべりしながらゆるくモルックを暇つぶしとしてやる、対戦よりも遊び感覚、穏やかな時間の過ごし方として楽しみます。自分の点数を忘れるのも珍しくありません。
フィンランド人はよくコテージでサウナを温めながら、湖畔でモルックを楽しみます。
モルックは人によって遊び方が違って、ゆるくコテージでもできれば本気で戦略を立てて仲間と大会にも出場できます。新しい友達もできるし、体を楽しく動かせるし、仕事や悩みを忘れてリフレッシュできる、シンプルで健康にもよい遊び。そしてフィンランドのものがこれほど日本でも愛用されていることも、私も非常にうれしくて、誇りに思っています。
ちなみに、私自身は日本モルック協会の公認アンバサダーを務めており、モルックをとおしてフィンランドと日本をより繋げるように活動しています。皆さんもぜひ、モルックを試してみて、日本でフィンランド気分になってみてください。
[PROFILE]
Noora Sirola(ノーラ・シロラ)
フィンランドタンペレ市出身。 タンペレ大学大学院卒業後、2019年から駐日フィンランド大使館商務部兼フィンランド政府観光局で勤務を経て、その後北欧専門旅行会社に務める。2024年3月よりフィンランドを代表するテクノロジー会社に務める。フィンランドの観光促進、京丹後市の温浴施設「ぬかとゆげ」のサウナプロデューサーや日本モルック協会公認「モルックアンバサダー」など、様々な分野で日本とフィンランドを繋ぐコネクターとして活動中。
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