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From FINLAND:フィンランドの森「metsä (メッツァ)」から

 

もい!(フィンランド語で“こんにちは“という意味)

 

フィンランドは国土の7割は森が占めていて、どこへ行っても大自然に触れることができます。大都市、首都のヘルシンキに住んでも、少し歩けばすぐ森に辿り着きます。森はフィンランド語で「metsä(メッツァ)」、何と言っても身近な存在、当たり前にあるもの、すぐそこにあるもの。私の実家も、フィンランドの第三都市タンペレにありますが、扉から出て1分もないところに森。日常生活の中で森を散歩したり、冬になったらスキーしたり、秋は紅葉に魅了されたりするなど。季節によって楽しみが異なりますが、森が近くにあることだけで、なぜか精神的に安心感が高まり居心地が良いのです。不安なときも、少し森の中で過ごすとすぐ気分が軽くなり、悩みも解決しやすくなります。

 

フィンランドの森はとても身近なもの、毎日のように触れ合う存在。

 

誰でも楽しめるフィンランドの森

 

フィンランドには、「自然享受権」という権利があります。英語ですと「Everyman’s Rights」。どんな権利かと説明すると、土地の持ち主を関係なく、基本的に自由に森に入って良い、自然をみんなで共有して楽しむことができるのです。具体的にいうと、森を歩き回ったり、野生のベリー、キノコ、ハーブを摘んだり、テントを張って一時的にキャンプしたり、湖で泳いだりボートを漕いだりするなど、自然享受権があるのでこのすべてが許されています。フィンランド人だけでなく、観光客も同じく。ただし、私有地に入ること、木を切り倒すなど自然を痛めることが、当然ですが、禁じられています。みんなで自然を大事にして、自然を尊敬して楽しみます。

 

自然享受権があるので、フィンランドで18万個もある湖で自由にボートを漕ぐこともできます。

 

森の恵み

 

フィンランドの森、そして食文化の欠かせない共通点と言えばベリーです。
フィンランドには37種類も食べられるベリーがあります。フィンランド人さえすべてはわかりませんが、みんなが知っているベリーをいくつか紹介しますと、ビルベリー、リンゴンベリー、クラウドベリー、ラズベリー、いちご、スグリ、クランベリー、ブラックベリーなど。その中でも代表的なもの、フィンランドの市場、レストラン、カフェに行くと必ず出会う「ビルベリー」と「リンゴンベリー」を、もう少し詳しく紹介します。

 

7月になると森の地面がベリーでカラフルに変身!

 

ザ・フィンランドベリー「ビルベリー」

 

ブルーベリーではなく、「ビルベリー」と言う。
ビルベリーというのは、野生のブルーベリーのこと、ブルーベリーの原種です。粒が小さくビタミンたっぷりで甘酸っぱい、中まで真っ青で、すごくおいしいのです。7月になると森の地面に摘みきれないほどの量のベリーが実って、ビルベリー摘み放題、食べ放題です。摘み出すと手指がすぐ青に染まるので、白い服装は要注意ですね。ベリーを摘むと必ず多くの蚊に囲まれて、ちゃんと服装を準備しないと刺されますが、それもまた夏の証拠。まあ一年に一回で良いか。

 

赤いベリー摘み専用の道具はだいたいのフィンランドの家庭にあります。葉っぱのだいたいがもう摘む時点で落ちるので後処理が楽になる。ちなみに、写真のバケツには10リットルのビルベリーが入っています。また、夏休みの朝起きて森に少しだけ寄って、ベリーを摘んでいって朝食のヨーグルトに添えると、少し豪華な夏のフィンランドならではの朝ごはんが楽しめます。

 

フィンランド料理と相性抜群の「リンゴンベリー」

 

ビルベリーに続き、フィンランドの食卓の大事な仲間と言えば「リンゴンベリー」です。ビルベリーより季節が少しだけ遅くて、7月後半から8月の頭までです。でも良い場所が見つかったら、同時にビルベリー摘みもリンゴンベリー摘みも楽しむことができます。

 

この真っ赤なベリーはよくジャムにして、肉料理に添えて食べます。ベリーをそのままで食べるとかなり酸っぱくて、私も子どもの頃少し苦手でしたが、砂糖とじっくり煮込んでジャムにして、トナカイのシチューとマッシュポテトと組み合わせると完全にフィンランドの味。フィンランドのレストランに行くとよくメニューにあるものなので、旅行の際にぜひ試してみてください。他のお肉料理や、フィンランドの家庭料理、ほうれん草のパンケーキとも相性がとても良い。

 

真っ赤なリンゴンベリーは日本語でコケモモと呼びます。長野の山とか少し涼しい地域へ行くと日本でも見かけることができます。

 

通年夏を思い出して

 

今の時期になると多くのフィンランド人は、バケツを持って森へ行って、ビルベリーやリンゴンベリーを数リットル摘んできます。特にビルベリーは、一年を通して食べられるように大量に摘んで、冷凍しておきます。冬になっても朝食のオートミールにトッピングしたりヨーグルトに添えたり、そしてもちろん、お菓子作りに使ったりして。特に人気なのは「ビルベリーパイ」、フィンランドを代表するスイーツの一つ。よく家庭で作られるものであり(家庭によってレシピも少し違う)、フィンランドのカフェに行っても必ずあるものです。フィンランドは冬が長くて暗いですが、冬も夏の恵みであるベリーでビタミン補給できると、また来年の夏まで頑張れます。

 

夏の味。いちごは市場で買って、ビルベリーは朝ごはんの前コテージの周りで摘んできました。

 

森に行かなくても、マーケット市場で手軽にベリーを購入できますが、多くの人にとってベリー摘みはセラピーみたいなものと言ってもいいでしょう。森に行って、他のことを忘れてベリーだけに夢中になることで余計な悩みを忘れて、リラックスできるのです。夏のフィンランドに行かれる機会があれば、少しだけ足を伸ばして森へ行って、フィンランド人気分になってベリー摘みを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

[PROFILE]
Noora Sirola(ノーラ・シロラ)

フィンランド・タンペレ市出身。 大学院卒業後、2019年から駐日フィンランド大使館商務部兼フィンランド政府観光局で観光推進、PR&マーケティングなどフィンランドの魅力を様々なメディアで発信。2022年からは北欧旅行フィンツアーの表参道の北欧カフェ&ショップ「Hyvää Matkaa!」のプロジェクトマネージャーを務めながらフィンランドと日本を繋ぐコネクターとして活動。

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