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COLUMN
生まれ変わり続ける大都市パリと財団が目指すアートとは
パリに新たな文化的名所が誕生しました。
ルーヴル美術館の真向かい、これ以上ない立地にできたカルティエ財団美術館。これまでモンパルナス駅近くで親しまれてきた同美術館が場所を移し、新たな一歩を踏み出しました。
プロジェクトを手掛けたのは、ジャン・ヌーヴェル。フランスを代表する建築家で、アブダビのルーブル美術館やアラブ世界研究所などを手掛ける第一人者。アーティストとして自己主張を押し出すのではなく、その土地の記憶や街の有り様を建築という形で再構成するのが彼のスタイルです。

当時のままの外見、右手はルーヴル美術館
今回カルティエ財団が選んだ場所は、かつて19世紀から20世紀にかけて百貨店や商業施設として栄えた建物で、ガラスの天井、鉄骨、広い中央の売り場空間が特徴です。産業革命以降の大都市パリの人々の新しい時代への期待感が満ち溢れた場所だったのでしょう。
ですがその後は、時代の流れと共に少しずつ廃れ、美術館の工事が始まる前までは、オフィスや古い画廊などが入る閑散とした建物だったと記憶しています。
ジャン・ヌーヴェルは、この建物を全く新しいものに変貌させるのではなく、繁栄した過去の記憶を取り入れながら生まれ変わらせました。現に外見は以前のまま、中に足を踏み入れたとたん光と反射の美しい世界に入り込みます。まるでその輝かしい過去の時代のエネルギー空間にタイムワープしたかのように。

ジャン・ヌーヴェルが作り出す美しい空間
以前にこのコラムにも書いたクリニャンクール蚤の市も、かつての栄光の名残をわずかに残しつつ現在は観光スポットとして生命力を保っています。パリはこうした「過去の記憶」を全て消し去らず、別の役割を与え生き続けている街なのです。
アートの内容に関してカルティエ財団が設立当初から一貫しているのは、いわゆる正統派芸術だけでなく現代アート、民芸品、アウトサイダーアート(知的障害を持つ作家作品)、先住民の生活造形、など枠にとらわれない作品のセレクションです(もちろん、投資目的でもあるでしょうが)。
これは、美術館内のパネル説明にもあるとおり、「アート(創造性)はどこにでも存在する」という考えに他なりません。世界的な宝飾ブランドとしてのカルティエは、素材やデザイン性以上に職人の手仕事や文化価値観、その裏にあるストーリーを重視してきました。
その財団の思想が、美術館のキューレーションにも色濃く反映しています。
値観を問い直す重要な映像で、自然との本当の共有とは何か、そして私たち自身が自然の一部であるという自覚の必然を感じました。

アマゾン先住民ヤノマミ族の記録写真
他にも、現代アーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーのインスタレーションは、大量のカゲロウと白いヴェールに投影したもので、カゲロウの一瞬の命と揺れる光が合わさった生と死の儚さを実感できる美しい作品です。

カゲロウが飛び交う、ボルタンスキーのインスタレーション
同じ時代に全く環境の違う中で生きる人間、日常の中で見過ごされる小さな虫の短い一生、どちらもカルティエ財団が追求してきた「創造性はどこにでもある」という思想とも繋がっている気がしました。

受け取る、考える、一人訪問客も目立つ
[PROFILE]
KISAYO BOCCARA
パリ在住の帽子職人&通訳コーディネーター。東京藝術大学デザイン科卒業後、渡仏。パリの帽子専門学校を卒業し、C.A.P.職人国家資格を取得。現在は、帽子&アクセサリーのブランドを運営しつつ、日仏をつなぐコーディネーターとして活動。パリ郊外の森近くにて、夫と息子2人の4人暮らし。
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